生活介護相談員とは、高齢者の生活・介護・年金・法律等の相談に応じ、必要な場合は専門家を紹介するアドバイザーです。高齢協が開催する講座を受講し、認定されると、終了証が授与されます。
 2010年1月~4月にかけて行われた「第1回 生活介護相談員基礎講座」では、下記の内容で講義が行われました。ここでは、各講義の要約をご紹介します。

第1講義 超高齢社会化する日本社会

講師 : 早稲田大学 濱口晴彦

01-1 超高齢社会化する日本社会文化と文明は生活の中で混じりあい、6つの生活領域において、老若男女が協力して係わり合い固有の生活の形を作り出してきた。成熟社会では、教育、文化、福祉、癒し、働き方が今後いっそう重視されるようになる。日本社会は「多産多死」から「多産少死」を経て「少産少死」の時代に入った。人口は減少していき、大衆長寿時代に入っている。長くなった人生をどのように生きるか、意味のある生き方を支える蓄えをどのように確保するかという方に関心がむいている。長寿社会は独居世帯が多くなる社会であるなら、その人がせめても孤独の淵に沈ませないセーフティネットをみんなで知恵を絞って用意したい。

 相談員になったときに、(1)身体の状況、(2)心理的特徴、(3)生活環境、(4)経済的環境、(5)人間関係、(6)個人的社会的経歴などを念頭において、相談相手とその家庭の様々な状況を想像することだろう。相談相手の人生の意味づけを考えることは、相談員の感性や資質として自分自身に戻ってくる。

第2講義 大衆長寿時代の家族の行方

講師 : 駒澤大学 荒井浩道

 02-3 大衆長寿時代の家族の行方大衆長寿時代は、心の豊かさを求めている。国民生活白書ではGDPと反比例に幸福度が下がっている。また、日本では年齢が高くなると幸福度が下がる。人は年を取ることイコール不幸ではないはず。「つながり」の減少が要因では。家族は愛情、つながり、絆、団欒というイメージなのかなと思う。家族起源は「食事」にあるとも言われている。家族と一緒にすごす時間は少なくなっているが、現代社会にとって家族とは、お金よりもずっと大切なものになっている。これも現代家族の特徴である。家族にとっての絆は愛情が最後の砦になる。しかし、それも危うい。家族は名詞ではなく、動詞になって、家族らしいことをしないといけない時代になっている。このままゆくと、家族は希薄化して消滅することが危惧される。家族の行方が問われている。新しい家族を模索する必要がありそうだ。

第3講義 高齢期の健康な暮らし

講師 : 鹿教湯温泉病院元院長 市川英彦

03-1 高齢期の健康な暮らし人が亡くなるのは主に病気が理由だった時代から、今は8割が自然死で天寿を全うし亡くなる時代になった。老化は病気ではない。人間の限界寿命は120歳だと言われている。加齢と共に起こりやすい病気は、第1は動脈硬化性疾患で、骨粗しょう症、慢性閉塞性肺疾患、癌と続く。脳の細胞はほとんど再生しないし、基本的に血管年齢で人間の寿命は決まる。癌で死亡する人も少なくなってきている。喫煙、飲酒、外食と言った生活習慣が病を起す。自己責任ではなく高齢者を取りまく社会環境の劣化が大きい。人間らしく心豊かに暮らせる地域づくりに向かう協同の力が元気印の高齢者をつくる。人間関係を深めて積極的に社会参加をすることがポイントだろう。役に立って長生きしたいというのが高齢者の本心だ。

第4講義 年金制度の基礎を知ろう

講師 : 年金実美センター 公文昭夫

04-2 年金制度の基礎を知ろう日本の年金制度は1942年、支配の論理の中でスタート。医療や介護は「現物給付」「短期保険」だが、年金は「現金給付」「長期保険」「請求主義」。国際的な常識としては、戦後に短期保険に切り替えている国がほとんどでこれは「積み立て方式」から「賦課方式」へという流れ。日本の国内でも「積み立て方式は改めるべきだ」という人が多数派。現在の制度は1階が基礎年金(加入期間で決まる定額の年金)、2階は率で所得に比例する年金。国・企業の負担もあるが、財源は保険料。1階を税金でという意見が多いが財源が問題。国民(基礎)年金と厚生年金のそれぞれに、老齢、遺族、障害の各年金があり、年金額は加入状況に応じて基礎年金と厚生年金の合算額。いろんな不安もあるから、できるかぎり事前に相談し、記録を確かめておくことが重要。

第5講義 認知症を知ろう

講師 : 榎本クリニック 松田隆夫

05-1 認知症を知ろう認知症は治るもしくは悪化を防げる。
認知症には、脳細胞の老化現象が原因のアルツハイマー病型認知症(4割)と動脈硬化から脳細胞が死滅する血管性型認知症(3割)の2大認知症がある。アルツハイマー病型は加齢によって誰にでも起こるが、治らなくても薬で悪化を食い止めることができる。血管性型は生活習慣を整えることによって予防できる。人間の神経細胞寿命120年と言われている。(120歳までは生きられる。)その他の認知症にはピック病型認知症、クロイツフェルトヤコブ病(BSE)型認知症など10以上ある。

第6講義 ネット社会と高齢者の暮らし

講師 : 三鷹SOHO 堀池喜一郎

06-3 ネット社会と高齢者の暮らし「地域とつながり」をキーワードに。

 過疎で高齢化率60%という集落は昔の絆が残っているから、なんとかなっている場合が多い。しかし都会ではそうはいかない。この絆をどうするのか。重要なことは、「ゆるい情報ネットワーク」ということで、それぞれのシニアが自分の得意分野でつながり、信頼され、地域の中で互いの関係を結びながら暮らす。都市の中で地域コミュニティの一員になるということ。ネット社会は使い方によってはコミュニケーションや地域のつながりを促進する重要なツールになる。メールやブログ、地域SNSなど。ワードやエクセルはいらない。できるかどうかは、自転車の運転と同じで、キーボードに向かった時間できまる。役立つことからはじめる。パソコンは計算機じゃない。

第7講義 高齢期の医療制度

講師 : 静岡県立大学 松田正巳

07-4 高齢期の医療制度医療費抑制では医療費は増える。制度を含む国のあり方が問われている。病気は自己責任ではない。長寿社会は幸せな世の中ではないのか。楢山節考の時代に戻すのか。

 後期高齢者医療制度は新政権では廃止することになっている。日本の医療制度はこれまでイギリスから学んでいた。国民全員が保険に入ることになった。国はこの5年間の医療改革で医療をアメリカ型に切り替えようとしてきた。アメリカは人口の15%にあたる4500万人が無保険者。医療費が支払えずに500万世帯が破産している。生活習慣病対策としての「メタボリックシンドローム」にも疑問を感じる。

第8講義 男性の介護

講師 : 男性介護者の会 荒川不二夫

08-1 男性の介護妻を長年介護して看取った。今は次男を介護している。

 男性が介護するというのはとても大変。炊事洗濯など男性が女性の分野に入る。特に排泄の介助が大変だった。介護する人は相手の気持ちを大切にしながら、愛といたわりをもって取組まなければならない。介護される側はわがままで、思わず虐待してしまうこともあった。虐待は経済的不安からも起こる。本人は在宅介護を望むが家族は施設へとなりがち。介護する中で一番の問題は、事故の防止。在宅介護にはリフォームが必要だ。

 荒川で「男性介護者の会」を7人で立ち上げた。会費は月200円。2カ月に1回集まる。主には飲み会。酒で本音の話が出てくる。行政からの支援も欲しい。京都、長野にもできている。加入して欲しい。いろんな苦労話があり、雑誌も出されていて情報を得ることができる。

第9講義 介護を支える様々なしくみ

講師 : 駒澤大学 荒井浩道

09-1 介護を支える様々なしくみ高齢者自身に対する支援は充実してきているが、家族に対する援助・支援は不十分である。人は年齢を重ねるだけで老いてゆくことはできない。傍らには誰かがいないといけない。居なければ老いることすらできない。「老い」とは誰ものものか。老いには語りにくさがある。人称で考えてみたいが、もっとも重要な切り口が二人称の老いで、具体的には家族から見た老いのあり方を考えてみる。従来のやり方では家族を苦しめる可能性がある。新しい支援に家族をつなぐ必要がある。援助方法として「ポストモダン」や「ナラティブ」という考え方がある。

 日本の福祉は「社会福祉基礎構造改革」で大きく変化した。その先鞭がつけたのが2000年に始まった介護保険制度。仕組みとして、「成年後見制度」、「地域包括支援センター」がある。介護保険は利用促進から抑制へ変わってきた。制度があるからこれでよしではなく工夫が必要だ。ケアマネージメントが重要で、新しい概念として「ストレングス(強み)」に着目した手法が注目を集めている。

第10講義 地域社会への参加の基礎知識 ~地域デビューのために~

講師 : 武蔵野大学教授 川村匡由

10-1 地域社会への参加の基礎知識 ~地域デビューのために~地域福祉や地域力、地域のまちおこしなど「地域」がキーワードになっている。最後はどこで自分の人生を完成させるのか、早く決めておいた方が軟着陸できる。健康・経済・心・家庭の絆・(地域)交流の5つのKが大事。人生100歳時代の人生設計が必要で早い方がいい。現役時代から時間の使い方を考え、肩書きをプライベートでも活用する。自分の地域に対するアンテナ広げ、参加し、地元にお金を落とす。「貯金」や「保険」に相当するものとして、定年後の活動に取組むことが大切だ。自治体が活動の場を提供することも大事。

 高齢者に関係しては様々な団体がある。街づくりにコミュニティビジネス・ソーシャルビジネスが地域を変える新しい公共の取組みとして始まっている。無償のボランティアでは継続した活動にならない。一定の報酬もあるという活動にしないと続かない。個人志向ではだめ。一つの点の活動で留まっては駄目だ。市民活動を、点から線へ、更に面にしなければならない。コーディネイター、キーパーソンが必要だと思う。

第11講義 安心で安全な地域と生活のために

講師 : 全国消費生活相談員協会 鈴木幸子

11-1 安心で安全な地域と生活のために悪質な業者が高齢者を狙っている。催眠商法、点検商法、利殖商法、リフォーム詐欺など。最近は振り込め詐欺も手が込んできている。目的がはっきりしない場所に近寄らない、業者を家にいれないなど注意が必要。だまされた場合でも「クーリングオフ」という制度がある。ただし、原則8日以内。過ぎても可能なケースもある。クーリングオフははがきでOK。日付が重要なので、簡易書留で行い、両面コピーをとっておく。自分からお店にいって買ったもの、ネットショップやカタログショップはだめ。その場合でも返品特約のある商品を選ぶことがベター。

 見守りのポイントは、

見慣れない人が出入り
家にみなれないダンボールや新しい商品契約書がある
かかってきた電話を切れないで困っている
いつもより表情が暗く元気がない
急に外出が増える
お金に困っている
など。

 解約の意思があるのか?その人自身がどう考えているのか、これが一番のポイント。
相談は、在住在勤の消費者センターもしくは「消費者ホットライン」(0570-064-370 土日も含めて対応可能)

第12・13講義 成年後見制度と「高齢」へむけての準備(法的側面)

講師 : 早稲田大学 田山輝明

12-1 成年後見制度と「高齢」へむけての準備(法的側面)成年後見は禁治産宣告という制度を改めたもので、戸籍に記載しないなど理念的にも大きく変わった。後見人は歌舞伎の黒子のような立場。成年後見制度は、法定後見と任意後見に別れ、法定後見は重い順に後見・保佐・補助の3つに分かれる。補助が新しくできた制度。

 後見人になるのは子供が32.5%、兄弟姉妹10.8%が、親が6.2%、配偶者が7.6%、その他親族が11.2%、トータルで親族が占める割合は68.5%で7割をきっている。2000年は9割が家族親戚だった。少子高齢化などが影響している。ドイツは現在6割を切っている。

 任意後見は公正証書で任意後見契約を結ぶ必要がある。任意後見人として働いてもらうには、家庭裁判所から任意後見監督人を選任してもらう必要があり、任意後見人は、家庭裁判所が監督人を選任するまでは何の権限もない。

 遺言は財産の多寡に関わらず考えた方がよいケースがある。遺言で意思を明らかにしておかないと法定相続になる。違った内容の相続にしたいのであれば、遺言をつくっておく必要がある。遺言には、自筆証書遺言(自筆、署名捺印。日付が不可欠)、秘密証書遺言(書名を自筆、捺印。封印し、証人2名で公証人に手続きを依頼)、公正証書遺言(公証人に作成を依頼。)の3つがあり、自筆証書と秘密証書遺言は検認手続(封印され状態のまま家庭裁判所へ持っていく)がいる。相続を含め高齢へむけての法的準備は必要だ。

第14講義 生活設計と資産管理

講師 : シニア社会学会 宮原 亮

14-2 生活設計と資産管理高齢期にいくら必要なのかなど必要な準備のこと。ライフプランは夫婦もしくは家族で立ててほしい。自分の棚卸、仕分けをしなければならない。QOLの向上を目指すライフプラン、ファイナンシャルプランにしなければならない。65歳以上では4割が毎月もしくは時々赤字だと答えている。家計とは健康と生きがいを下支えしてくれるもの。健康はお金では買えないが、維持したりするのにはそれなりに費用が掛る。生きがいは人によって非常に違いがあるが、やはりお金がかかる。ライフスタイルの変化で家計も変わる。保険の見直しやローンの借り換えなども検討が必要。エンディングノートも自分がものを言えなくなったとか判断が難しくなった時に考えていることを伝えるために必要になるかもしれない。ライフプラン・ファイナンシャルプランとして、5~10年を見通して収支計算書や貸借対照表、イベント・キャッシュフロー表なども作ってみてほしい。

第15講義 高齢者と仕事

講師 : 静岡理工科大学 秋山憲治

15-1 高齢者と仕事労働の対価があるものを仕事だと考えているが仕事の幅は非常に広い。お金にならない職業以外の仕事もある。労働とは手段的な行為で価値を実現しなければ意味がない。ほとんどの場合、労働がないと価値は実現されない。

 働く、働かないという選択肢はあるが、今後の高齢者の暮らしは更に不透明で、そのライフスタイルが貫けるのかどうかもわからない。引退後役割移行がうまくできない男性と、就業経験がないという女性が多いのは個人だけではなく、社会の仕組みに問題がある。女性と同様に、高齢者の就労については非正規雇用が多く、不利で当たり前ということが社会にはある。

第16講義 高齢者のライフスタイル

講師 : 早稲田大学 嵯峨座晴夫

16-1 高齢者のライフスタイル高齢者とは「高齢期にある人」で、65歳を高齢者として語ることは既に適切さを欠き、高齢者の再定義が必要になっている。社会学では社会的な引退の時期を迎えた人を言う。高齢者というカテゴリーがなくてもよいかもしれない。日本では少子化と長寿化が急速に高齢化を進めた。健康志向とともに、高齢社会では人々の生活スタイルが変わってきた。21世紀は高齢者の存在が高まる時代で、高齢者のライフスタイルが一般的になる。世代間の対立ではなく共存共栄という考え方が必要。高齢者の社会的地位が上がっていくのが日本の新しいモデルになる。一方、日本では格差が拡大する中、特に高年齢層での格差が拡大している。(日本全体の格差 [ ジニ係数 ] は0.52です。これを75歳以上で見ると0.77)

 高齢者の生きがいは一般的には喜びや楽しみを指しているようだが、活動的な人は「他人からの感謝された時」とか「若い世代と交流しているとき」など、人との関係の中で生きがいを感じている。生きがいは「人のために生きる」ということだと思う。生きがい研究は重要な分野になる。

第17講義 相談者としての心得

講師 : 宇都宮短期大学 小野篤司

17-1 相談者としての心得相談者としてまず大事なのは気づき。気づきとは相手に関心と興味をもち、相手の気持ちを受け入れようとすること。そして次に、(1)はっきりと、(2)明るく、(3)笑顔で、挨拶すること。話を聞くには、言葉の奥にある気持ちまで耳を傾ける(傾聴)。そして、あるがままに受け入れ(受容)、理解を示し気持ちに寄り添う(共感)こと。聴く時は反応をしながら聴き、意図的に頷きと相槌をいれ、言葉の一部を繰り返しながら要点を整理して返してあげること。質問には「開かれた質問」と「閉ざされた質問」があり、この2つを組み合わせて行なう。相談を受ける時の相手との位置関係は緊張を和らげる90度を心掛け、目線を合わせること。最後に、自然な笑顔で接することが大切。

第18講義 葬儀の現代的事情

講師 : 遺品整理専門会社キーパーズ 吉田太一

18-1 葬儀の現代的事情人間が死ぬと必ず遺品が残る。その遺品には、その人が生活した様々な情報が詰まっている。その整理が私たちの今の仕事。孤立死が増えているがその人たちには共通項があり、生活(精神・身体・経済・社会)のバランスが崩れている。昔は大家族で崩れても、誰かが支えてくれた。孤立死を防ぐには、毎日2人以上に挨拶をすること。お互いの認識が生まれ、それでどんなに悪くても24時間以内には発見される。

 今の葬儀は葬儀社が作り上げたシステム。古くは、火葬も墓もなかった。墓のあるのは偉い人だけだった。韓国は墓のない人が7割、納骨堂に入っている。日本でも無縁墓が増えている。現代は火葬が中心だが、散骨や検体も増えている。関東では3人に1人は葬儀をやっていないという状況。そのうち、ディスカウントショップで棺が売り出されるだろう。異業種からの葬儀業界への参入も増えている。
 エンディングノートは遺族の参考になるし、書いて見ると頭の整理ができ、お勧めする。